遡及立法合憲判決の意義
法律によらなければ課税できないとの憲法原則は、自分の税金がいくらになるのか予測しながら経済選択行動することを保障するためのものであり、予測計算判断を十分にできるようにするための期間こそ確保すべきことを要求するものです。
翌年施行などのように、公布した法律の熟知までの期間の十分な確保への要求です。
それを有らぬことか、遡及立法まで合憲とする無謀な最高裁判決が平成23年9月22日にありました。不動産の損益通算廃止立法の遡及適用に係る争訟事案です。
その無謀さのゆえか、判決には逆に、増幅的な政治的効果が生まれてしまったと言えそうです。
国民の不断努力義務
憲法は12条で、国民に不断の努力で自由や権利を保持すべきことを要求しています。自由や権利はタナボタで与えられるものではない、と言っているわけです。
たとえ敗訴になろうとも、信ずるところによって国の誤りを正す。これが、憲法でいう国民の権利保持の不断の努力です。
これからの遡及立法
今回の最高裁判決で、今後とも遡及立法が許されることになるのか、と言えば、当然ながら、もはやそんなことは今後起きないこと必定です。
税務訴訟まで起こしてしまった税法改正は、財務省の失敗事例ですから、二度と繰り返さないでしょう。
国会での、厳しい追及を避けようとする官僚の学習効果としては十分だからです。
敗訴納税者のさらに大きな貢献
それだけでなく、今年の税制改正の失敗過程で、納税者有利規定だから遡及適用で誰も文句を言うまい、と高を括っていると、そのまま税法条文が消滅してしまいかねないリスクがあることも学習したはずです。
電子申告控除やバリヤフリー改修控除、森林計画特別控除は、自民党・公明党の3ヶ月つなぎ法に入っていませんでした。もしかすると、再つなぎ法で収束だったとすると、そのまま消滅してしまう可能性が現実にありました。
今後は、期限延長にからむ納税者有利規定の遡及適用立法も、安易には行われなくなるのではないでしょうか。