大きな抜け穴だった自己株税制
高い帳簿価額の子会社株式を自己株として引き取らせることにより、益金不算入のみなし配当と株式譲渡損を発生させる節税手法がありました。
この手法を使い、連結納税の隙間を突いて4千億円もの節税をはかった日本IBMは法令の乱用として国税当局により節税額を追徴され、現在係争中のようですが、昨年の税制改正でこれらの手法はほぼ完璧に封じられることになりました。
しかしまだあるらしい
一般の「市場取引」での自己株取得では、買い手が誰か不明で自社株買いにあたるか分からないため、譲渡側にみなし配当課税は適用されないことになっています。
7月25日の日経新聞の報道によると、東京証券取引所の自己株式立会外買い付け取引「ToSTNeT-3」は買い方を発行会社に限定するものなので、みなし配当発生取引に該当する可能性が高そうです。
公開買付による自己株取得は
公開買付による自己株取得については、相手が誰か明確なので、譲渡法人については一貫して、みなし配当発生取引としてきましたが、個人譲渡者については、昨年平成22年までは、単なる市場売却とする扱にしていました。ただし、今年からは、これも法人と同じ、みなし配当発生取引です。
なお、平成22年税制改正では、
①公開買付に応ずる目的での取得
②100%支配関係にある会社間取引
この二つに該当する場合のみなし配当については、節税にならないように手当されました。
ゼンショーの場合は
日経新聞の報じたところでは、ゼンショーはカッパ・クリエイトの実施した「ToSTNeT-3」による自社株買いに応じて多額の節税に成功しました。これに、国税局がみなし配当対象外として20億円の追徴をした、ということです。
ゼンショーは自社株買いに応ずる目的で株式を取得したわけではなく、また100%支配の関係にある株式でもないので、一般の公開買付の場合の扱いと異なる課税関係にすることは難しいのではないかと、思われます。