憲法原則の解釈3態
「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」この憲法規定から、後からの法律で遡及課税が可能かについて、解釈が分かれています。
① 判決の世界では、立法の予測があれば遡及課税されても文句を言うな、というようなものでしたが、いま、それでよいのか、最高裁の最終判断待ちです。
② 最近の行政サイドの見解は、原則として法律の遡及適用は可能だが、不利益不遡及の原則があるというもので、納税者有利規定に限っては遡及適用を前提に税制改正案を作っています。
③ 遡及課税を過去何年にも亘ってしてよい訳はないが、何か月かならよい、ということを、この憲法規定から読むのは恣意的である、として、租税負担の増減を問わないすべての課税の変更の遡及適用を排除すべしとする見解は原理主義的で、少数派です。
自公のつなぎ法の原理主義的性格
自民党と公明党の提出した日切れ税法に係る「つなぎ法」は3月31日となっている措置法規定を6月30日に改めるだけで、すでに前年末12月31日で日切れになってしまっている規定については全く関心を示していませんでした。
生きている法を生き永らえさせるのが「つなぎ法」の意義なので、すでに日切れとなってしまっている法はつなぎようがないとの自覚に達したのかもしれません。
つなぎ法原理主義の今後への影響
ところが、6月22日に国会通過した自公民3党合意の改正税法は、当初の改正税法案から民主党色の濃い部分を排除したもので、財務省主導らしく遡及課税を是とするものでした。
とは言え、政権が常に安定している保証がないことを前提にすると、納税者有利の規定だからといって事後立法での遡及適用を予定した安穏とした立法作業は、時限法規を廃止にしてしまうリスクを負うことを、財務省は学習したはずです。
今後は、法解釈の③の考え方が選択されて変わっていくということではありませんが、結果として、その③の考え方が実態を反映した考え方として、受け入れられていくことになるのだと思われます。