現物配当、現物分配も配当財産として「金銭以外の資産を交付する」ことですが、これらを巡る会計処理は、それぞれ会社法、会計基準、法人税法で規定されています。
会社法上の取扱い
会社法では、配当財産について効力発生日において時価で評価替えした上で、時価と簿価の差額については当該日の属する事業年度において損益として計上し、評価替え後の簿価(すなわち、時価)により剰余金を減少させます。
設例 S社は、剰余金の配当として、S社の子会社X社の株式(簿価100、配当効力発生日の時価200)を株主である100%保有の親会社A社に交付(当該子会社株式は親会社からみれば孫会社)する。
(S社の仕訳)
利益剰余金200 / X社株式 100
株式譲渡益 100
(親会社A社の仕訳)
X社株式 200 / 受取配当金 200
* 現物配当に係る源泉徴収は考慮していません。
会計基準上の取扱い
会計基準も基本的には、会社法の取扱と同じですが、100%グループ法人の子会社から親会社に現物配当を行う場合など一定の支配関係がある場合には、配当効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額により剰余金を減額することとしています。つまり、先の設例でいえば、S社では譲渡益100は計上されず、A社ではX社の受入価額は100となります。
法人税法上の取扱い
現物分配に関して、100%完全支配関係にある内国法人間の現物分配については「適格現物分配」と規定し、課税関係を生じさせないようにしました。具体的には、交付を受けた資産については「簿価で移転」、これに伴う剰余金の減少についても配当金と認識せず、かつ、益金の額にも算入しないこととしまた。この課税関係を先の設例で示すと次のようになります。
(S社の仕訳)
利益積立金100 / 子会社株式100
(親会社A社の仕訳)
子会社株式100 / 利益積立金100
一方、適格以外の現物分配については、交付した資産は時価で移転、移転に伴う時価と簿価の差額を譲渡損益として認識、それに伴う剰余金の減少は配当金と認識します。先の設例の会社法上の取扱いと同じようになります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
税理士法人タカノ・髙野伊久男公認会計士事務所では、個人・法人問わず
税務を中心とした幅広いサービスを提供しています。
公益法人、学校法人、労働組合監査にも対応しております。