業務委託を定めた法律上の規定はない?
業務委託契約とは、依頼主の業務の一部または全部を委託先に任せる際に締結する契約をいいます。従来から事業者間の取引で広く結ばれる契約であり、聞いたことがない方はいないでしょう。
しかし、実は業務委託契約の中身を定めた法律上の規定はありません。民法は、典型的な契約として13種類の契約(典型契約といいます)を定めておりますが、業務委託契約という類型はありません。
そのため、「業務委託契約だから法律上こうなる」というのではなく、当該契約の趣旨や中身に照らして、そもそもいかなる内容の契約なのかがまず問題とされます。実際には、民法上の請負契約、委任契約、それらに近いもの、あるいは、両者が混合されたもの等といろいろです。
請負と委任
因みに、請負契約は請負人がある仕事を完成することを約し、注文者がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを内容とする契約です。これに対し、委任契約は、ある事務の処理を自分以外の他人に任せる内容の契約をいいます。
請負契約はその目的が結果、成果物の完成に向けられているのに対し、委任契約の目的は委任する事務の遂行そのものにあります。その違いは報酬の支払われ方、トラブルがあったときの契約不履行の成否等に微妙な影響を与えます。
そこで、具体的トラブルの処理では、契約書上の文言は勿論のこと、契約の趣旨に照らして、民法上手かがりとなる規定を探し出し、当てはめるということになります。
雇用の代替手段として用いる場合
ところで、近時、人件費の削減、雇用に伴う解雇などのリスクの回避を目的として業務委託とする例があります。しかしながら、両者の間に使用従属性が認められる場合には、労働基準法上の労働者として、同法による規制を受けることがあることに留意が必要です。
例えば、業務の遂行について裁量がない、報酬が時間や日数で算出される、従業員と同様の業務をしている、給与所得として源泉徴収票を出している、労働保険を適用させている等の要素がある場合には、労働者性が認められる可能性が高くなります。
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