居住者か非居住者の何れかに該当するかによって、税務上の取り扱いが異なります。
居住者とは
所得税法上「居住者」とは、「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう」としています(所法2①三)。一方、非居住者とは「居住者以外の個人」をいいます(所法2一五)。それでは「住所」の意義はどのように考えればよいのでしょうか。民法22条によれば、「生活の本拠」としています。具体的には、住まい、仕事、滞在、預貯金、家族などの状況について総合的に考え、判断します。それでも判断しにくい場合には、OECDモデル条約4条では、二重住居者について振り分け規定があります。
課税上の取り扱いの違い
日本の税法上の居住者であれば、国内源泉所得・国外源泉所得について、日本で課税されます。一方、非居住者であれば、国内源泉所得のみが課税されます。
具体的な2つの事例
1つめは、武富士事件です。消費者金融大手の武富士会長夫妻から会長の長男が海外法人株の生前贈与を受けましたが、香港に住所があるので日本の贈与税は課されないとして申告しませんでした。ところが課税庁は会長の長男を日本の居住者であるとして、約1,600億円の申告漏れを指摘しました。東京地裁平成19年5月23日の判決では納税者勝訴、一方、東京高裁平成20年1月23日の判決では納税者敗訴でした。「生活の本拠」をどのように判断するのかが、争点となっています。
2つめは、ハリーポッター事件です。世界的ベストセラー「ハリーポッター」の日本語訳を手がけた翻訳家の松岡氏が、スイス居住者であるとして日本で20%の源泉徴収のみで申告をしていませんでした。2006年に課税庁は、松岡氏を日本の居住者であるとして、35億円の申告漏れを指摘しました。松岡氏が頻繁に帰国し、出版・PR業務をしていたこと、日本の会社の社長であったことなどを理由に、生活の本拠は日本にあると認定したものです。その後2007年には政府間協議により、最終的には日本の居住者であるとの判断が下されました。この事件において、源泉徴収では20%、申告では約50%(必要経費控除後)と税率が異なり、慎重な判断が要求されます。