建物の区分所有等に関する法律は昭和38年から施行されていますが、固定資産税の課税はその後20年もの長きに亘り区分所有課税ではなく、共有者課税を続けました。
共有者課税と区分所有課税
共有者課税とは、共有土地に対する固定資産税の課税方式で、共有者のうち任意の者に「甲ほか○○名」宛の納税通知書が交付され、甲が共有土地全体の税額を一括して納税する一括課税方式のことです。共有者間には連帯納税の義務があります。
区分所有課税とは、各区分所有の戸別の持分に応じて課税する分割課税方式のことで、連帯納税義務が解除されています。
マンションでの共有者課税
共有者課税のままだと、マンション区分所有戸数者170とすると、その中の1人甲に対し「甲ほか169名」宛の納税通知書が交付されることになります。甲は170戸分の固定資産税と都市計画税をそれぞれに不満の湧かないように按分し、徴収したうえで期限までに納付しなければなりません。エーッと思うようなことが強いられます。
不合理を裁判に訴えたが
不満がおきるのは当然で、共有者課税方式は、民法における連帯債務者のように、主観的連帯関係をもった者の間において適用されるべきで、共同住宅所有者のような、相互に面識もない、主観的連帯関係のない者の間においては適用されるべきではない、と主張した出訴がありました。
しかし、判決は、共有土地については、一括課税方式によるべきであり、分割課税方式は、適法であるとはいいがたいとし、当時すでに分割課税方式を採っていた神戸市に対し、違法な課税方式というべきと断罪しました。
あきれた判決でようやく法改正
法の定める税額徴収の要請に応えればよいのではないかとの関係者の観測に反した、裁判所のゴリゴリの形式的な法文解釈主義に遭遇して、自治省も重い腰をあげ、昭和58年の改正により地方税法には第352の2条が追加され、連帯納税義務が解除され、持分ごとに課税されるよう立法的解決が図られました。
課税当局も無策なら、それ以上に裁判所も長い判決文を書くだけで問題解決能力がないことを暴露した歴史の一場面でした。